第一話「大黒柱のある家」
第三回 地震に耐える木組みの技
2006年3月吉日、いよいよ建前です。まずは「大黒柱」の据え付け。大人でも抱えきれない程太く、一階床下から二階屋根裏まで貫く継ぎ目のない大黒柱は見るからに頼もしい限り。基礎に造られた十字形の受けにガッチリと嵌め込まれます。
この大黒柱を中心にして、古来は堅牢な「城」などの構築に使われた日本建築伝統の木組み技「シャチ栓」を駆使して、太い梁を組み立てていきます。
現代の一般的な住宅建築では残念ながら「木組み」の技は廃れつつあり、あらかじめ工場で規格寸法に加工された木材を、ボルトなどの金物を多用して組み立てるといった簡便な工法が主流になっています。
けれど家族の暮らしぶりがそれぞれに異なれば、暮らしを支える「家」にも一軒毎に異なった個性があるはず。効率を優先して画一化された、「キットモデル」のような建て方が正しい「家造り」だとは思えません。
また金物を多用した家では部分的な強度にムラが多く、地震などで強い「歪み」の力がかかった場合には、金物と木材の接合点に歪みの力が集中して、破壊に至る事例も多く見られます。
一方、職人の優れた技術で造られる木組みの家は、全体としての強度にムラが無いからこそ、木が本来もつ柔軟性が発揮され「歪み」の力を和らげる働きをし地震に強い家になるのです。
災害のニュースを見る度に気付きます。現代の簡便な技法で建てられた住宅のあまりの脆さ、一方で歳月を経た寺社はびくともせずに立続けている。地震大国だからこそ培われた、地震に強い日本の伝統建築技法。廃れさせてしまうのはもったいないと思いませんか。
Yさん邸の柱に使われた木材は全て木曽ひのき。美林で名高いひのきの里を建築責任者自身が訪れて、直接吟味し買い付けたいずれ劣らぬ名木ばかり。
建築現場を包むひのきの芳香が身を律する。孫子の代まで残せる良い家を建てたいという施主Yさんと、服田建設のこだわりが、いよいよ形を表しつつあります。